構想はあるが、コンテンツに落とし込む手立てがない
初期記事を公開し社内運用へ。後年、上場企業がM&Aで取得
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背景と課題
クライアントは大手広告代理店で、注文住宅メーカー20社前後から集客を請け負っていました。カタログの一括請求が成果地点となる仕事です。
クライアントの構想
構想の出発点にあったのは「住宅展示場のデジタル版」という考え方でした。住宅展示場では複数メーカーの住宅がまとめて紹介され、モデルハウスを実際に見て体験できます。それをオンラインで実現しようというものです。
複数のメーカーを複数の条件で比較検討したうえで、その人に適した会社へ問い合わせが渡る仕組みになっていました。条件を満たす会社が5社、6社と複数ある場合は、ひとつのフォームからまとめて見積もりを依頼できます。
注文住宅の検討には、数ヶ月程度、比較的長い時間が必要になります。その間、メディアをブックマークしてもらう、メルマガで記事の更新を伝えるなどして読者と継続的な接点を持ち、問い合わせまでの間、継続的に回遊してもらえるようなメディアを作る。そうした構想がクライアント側にありました。
収益構造とゴール
複数社のカタログが一括で請求されると、各社から成功報酬が発生します。つまり請求が通る会社の数が多いほど利益は大きくなる。できるだけ多くの会社の資料請求を通したいというのが、この事業の構造の根本にありました。
相談の出発点
クライアントには、このオウンドメディアを新しい事業の柱に育てたいという狙いがありました。構想の輪郭も見えています。ただし、それを実際にどんなコンテンツとして形にするのかという段になると、社内にノウハウがなく着手できないままになっていました。そこから、外部にコンテンツ設計を委ねる話になっています。
集客は有料広告を使わずSEO中心で行う前提でしたが、住宅領域のメジャーキーワードはすでに飽和しており、正面から上位表示を狙うのは難しい状況でもありました。
やったこと
担当したのは、メディア全体のコンテンツ設計と記事制作です。クライアントが描いていた購買行動のモデルを前提として、そこにどんな記事を、どういう構成で置いていくかを決めていきました。
前提として共有されていた購買行動
家を買う人がたどる行動は、次の10段階として整理されていました。
特徴的なのは、購入へまっすぐ進む線に加えて、途中で検討が止まる経路が描かれていた点です。「結局、よく分からない」「今はいいや」といった心理から、6の保留へ落ちていく線が何本も引かれています。長い検討期間を持つ商材では、この止まる瞬間が頻繁に起きるためです。
1. 段階ごとに、当てる記事の種類を決定
この各段階に対して、どの種類の記事を置くかを対応づけました。
興味を持ち、調べ始めたばかりの段階では、読者にまだ知識がありません。ここには、注文住宅にはこういう立て付けがある、といった内容を紹介し、理解そのものを支える記事を置きます。
資料請求を促す段階では、組み立てが変わります。AとBとCという選択肢があるが、どれがよいのか。そう問いを立てたうえで、最終的には自分だけで検討しきるには限界があり、専門家に相談する必要がある、という地点まで案内する。そこから資料請求のフェーズへつなげていきました。
2. カテゴリ構成とキーワードの設計
メディア全体として、どのカテゴリを立て、どんなキーワードで記事を作っていくかを提案しました。メジャーキーワードが飽和している領域だったため、正面から取りにいくキーワードの選び方には制約があります。
3. 記事の制作とディレクション
記事の形式としては、困りごとに対する解決策を提示するノウハウ記事を軸にしています。読了後に何らかのアクションを起こす確率が高いというエビデンスがあったためです。記事の構成は、競合の構成や狙うキーワードをもとに検討しました。
4. 網羅すれば完成する設計として引き継ぎ
初期記事を100本程度制作した時点で社内運用へ移行することは、当初からの想定でした。
住宅は古くからある商材で、顧客の困りごとにもある程度パターンがあります。そのパターンを網羅できればメディアとして完成する、という見立てがあったためです。記事が無制限に増え続ける種類のメディアではないと判断し、そこまでを一区切りとして設計しています。
実際の成果物
掲載している画像は、当時の資料をもとにAIで再現したイメージです。守秘義務等の事情により、実際の資料とは異なります。
10段階の購買行動と、各段階で起きる離脱・保留の経路を示したものです。複数社のカタログ一括請求をゴールに置き、一度に複数のカタログを比較するターゲットのペルソナと導線を仮定しています。

困りごとに対する解決策を提示するノウハウ記事です。読了後に何らかのアクションを誘引する確率が高いというエビデンスをもとに構成しました。
結果
初期の記事群を公開したうえで、社内運用へ移行しました。どの段階にどんな記事を置くかという方針を含めて引き渡しています。
このメディアはその後、数年を経て上場企業によるM&Aで売却されました。
いまのサービスとのつながり
この案件でクライアントには、すでに構想の輪郭が見えていました。長い検討期間に寄り添うメディアを作りたい。読者と継続的な接点を持ちたい。そこまでは自分たちで描けていたわけです。それでも動き出せなかったのは、その構想を実際のコンテンツへ翻訳する手立てを持っていなかったからでした。
私が担ったのは、まさにその翻訳の部分です。読者がどの段階にいるとき、何を知りたがっていて、何を読めば次に進めるのか。それを記事の種類とカテゴリ構成という、明日から作れる単位にまで降ろしています。
企業の“らしさ”についても同じことが起こります。大事だと分かっている。必要だとも思っている。それでも何から手をつければよいかが分からないまま止まってしまう。ナラティブ構築サービスがやっているのは、その抽象的な構想を、実際に手を動かせる形にまで具体化することです。