SEOで上位表示できず、原因も分からない状態
一部キーワードで上位表示。社内運用へ引き継ぎ
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短期の区切りを設けたプロジェクトのため、指標より運用体制の確立に重心を置いています。
背景と課題
クライアントは携帯事業者の比較サイトを運営していました。そこから自社が代理店契約を結んでいる特定の携帯電話事業者へ新規加入者を送客し、加入が発生すると代理店収入が入るというビジネスモデルです。
この事業者は認知度が高いとは言いにくく、インターネット上での評判という面でも課題を抱えていました。そのため単に流入を増やすだけでなく、ブランディングやイメージの改善という観点も同時に求められていました。広告出稿よりもコンテンツマーケティングで訴求していくという方針は、こうした事情からクライアント側であらかじめ決まっていたものです。
比較サイトから自社の申し込みランディングページやポータルサイトへ流入を促したい。ところが比較サイト自体が検索で上位を取れず、流入が限られていました。
クライアント自身は、その原因についてひとつの見立てを持っていました。Googleから何らかのペナルティを受けているのではないか。あるいはSEO対策そのものが足りていないのではないか、というものです。
サイトの状態としては、すでに公開はされていたものの、記事は数本ある程度で、リソースの問題から更新が止まっていました。既存の記事も、試験的に書いてみたという水準にとどまっていました。
期間についての事前の見通し
このプロジェクトは、6ヶ月を一区切りとすることが最初から決まっていました。その期間の目標は、SEOに関する問題を解決することと、メディアを軌道に乗せるところまで持っていくことの2つです。
あわせて私からは、SEOによる改善は本来もっと長いスパンを要するもので、6ヶ月では到達しきらないという見通しを、着手前にお伝えしています。クライアントもそれを了解したうえでの6ヶ月でした。
やったこと
1. 原因を特定できる状態づくり
まず、クライアントの見立てだったペナルティの有無を確認しました。結果として、ペナルティは受けていませんでした。
実際の原因は複合的で、基本的な対応がいくつも積み残されている状態でした。一般的なテクニカルSEOのうち未対応の項目がいくつかあり、それらを順に潰しています。常時SSL化もそのひとつで、当時求められるようになってきていた対応でした。SSL化されていないサイトは、検索結果で評価されにくい状態にあったためです。
そして最も根本的だったのが、Search ConsoleとGoogle Analyticsが正しく機能しておらず、データが取れていなかったことです。原因を特定する以前に、判断材料を得るための下準備ができていませんでした。そこでまず計測の基盤から整理しています。
2. 全体設計を決めてから、個別記事へ
SEO分析とキーワード調査を行い、検索上位を狙えるキーワードを絞り込みました。そのうえでキーワードをマッピングし、どのカテゴリー構成で、どんな記事を何本作ればメディアとして充実するのかという計画を立てています。記事はその計画に沿って順に制作しました。
サブキーワードは、大きく2つの群に分かれました。企業情報などオフィシャルな内容に関わる群と、企業・サービス・経営者などの評判に関わる群です。それぞれ用途と目的が異なります。
着手の順序は、オフィシャル系の群を先にしました。具体性が高く扱いやすいキーワードが多かったことが理由のひとつです。あわせて、この業界とジャンルへの理解を深めるうえでも、まずこちらから入って、その後に評判系へ進むほうが自然だと考えました。
記事の構成は、競合他社の構成や狙うSEOキーワードをもとに、見出しレベルまで検討しています。
3. 月次で回る制作フローを設計
記事を継続して出し続けられるように、月次サイクルの業務フローを組みました。月次制作本数の指示から、キーワード選定、企画案の制作と修正、記事制作、確認・修正、図表制作、公開準備、公開前後の確認まで、11の工程を各工程のリードタイムとともに定めています。
この段階では、ディレクション、サブディレクション、ライティングをいずれも私が担当していました。後の内製化を見据えて、どの工程を誰が持つのかが一目で分かる形にまとめています。
4. 公開後の実績を見て、選別と改善
数ヶ月かけて経過を見ると、順位が上がる記事と上がらない記事に分かれてきます。上位表示できた記事はそのまま維持し、伸びなかった記事については内容を見直しました。見直しの観点は次のとおりです。
- 狙ったキーワードが適切だったか
- 競合に対して盛り込むべき内容が不足していたか
- 自社サイトとそのキーワードの相性はどうか
- そもそも上位を狙えるキーワードだったか
そのうえで記事をブラッシュアップし、改めて上位表示を狙っています。
5. 引き継げる形で残す
テクニカルSEOの対策では、将来の内製化を考慮して、主要な対策が簡単に行えるプラグインを選定・設定しました。専門的なスキルを持たない人でも、後の運用が負担にならない方法を提案しています。
作成した指示書・業務フロー図・キーワード選定表は、実務上つくらないと作業が進まないため、自分の作業用として整備したものです。同時に、定期的なミーティングでクライアントの担当者に「今回はこういう作業を行い、こういう改善が見られた」と数字で説明するための資料でもありました。
この2つの目的で作った資料が、結果として引き継ぎにそのまま使える状態になっていました。
実際の成果物
掲載している画像は、当時の資料をもとにAIで再現したイメージです。守秘義務等の事情により、実際の資料とは異なります。

将来の内製化を考慮し、主要なSEO対策が簡単に行えるプラグインを導入・設定しました。対象ツール・設定項目・作業概要・参考URLを一覧にしてあり、スキルのない人でも手順どおりに進められます。

月次サイクルで回る11工程を、担当とリードタイムとあわせて定めたものです。月次制作本数の指示から公開後確認までを一枚に収めています。

上位表示できているキーワードをピックアップし、どういった内容が上位表示に結びつくのかを分析しました。具体性が高く正確な情報を提示できる記事ほど、上位に来ていました。

サブキーワードを、オフィシャル情報に関わる群と、評判に関わる群の2つに整理したものです。着手のしやすさをふまえて、前者から順に記事化していきました。

見出しの段階で具体的な数字を示す構成にしています。競合他社の構成や狙うSEOキーワードをもとに検討しました。
結果
一部のキーワードで検索8位以内の上位表示を達成しました。あわせて、キーワード選定から記事制作、チェック、公開までの業務フローが整い、社内の担当者へ引き継いで内製での運用が始まっています。
着手前にお伝えしていたとおり、SEOの成果が完全に出るには6ヶ月では足りません。それでも、原因を分析できる計測基盤と、記事を作り続けられる運用の型は、この期間内に残すことができました。
いまのサービスとのつながり
この案件でクライアントが持ち込んだのは、「ペナルティを受けているのではないか」という自分たちで立てた仮説でした。調べてみると、それは外れていました。
実際に起きていたのは、計測の基盤が整っておらず、何が原因かを判断するための材料がそもそも揃っていないという状態です。ですから最初にやったのは、原因を探す作業よりも前に、原因を探せる状態をつくることでした。
当事者が自分の状況について立てる見立ては、しばしば実態からずれます。そして本質的な問題は、その見立てを確かめる手立てを持っていないことのほうにあります。ナラティブ構築サービスで第三者が入る意味も同じところにあります。会社の“らしさ”についても、まず何が起きているのかを外から見える形にするところから始まります。
もうひとつ、この案件では作業と説明のために整えた資料が、そのまま次の担当者へ渡せる形になっていました。使える形で残すという点も、いまのアウトプットの考え方と地続きです。