犬種ごとの魅力的な伝え方が、書き手の感覚まかせになりやすい
最大5メディア・6年にわたり質を落とさず継続
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制作体制
制作記事の成果
CTRは、記事内の商品紹介リンクなどのクリック率を指します。
メディア全体の規模(最も成長した時期)
こちらはメディア全体の規模です。5メディアまで拡大した時期の数字で、担当記事に限った成果とは範囲が異なります。
背景と課題
クライアントが描いていたのは、特定の犬種に特化したキュレーションメディアを立ち上げ、その犬種の固定ファンを集めたうえで商品を展開する、というビジネスモデルでした。
一定のペースでコンスタントに記事を出し続ければ固定ファンがつくことは、クライアント側の見立てですでに分かっていました。あと何件記事を出せばインプレッションがどれだけ伸びるか、という目標値も立てられる状態です。
一方で、クライアント社内の編集部には、取材記事や企業とのタイアップといった優先度の高い仕事に人と時間を充てたいという事情がありました。それでもメディアは常に更新され続けている必要があります。
そこで私に求められたのが、InstagramやYouTubeで紹介されている動画や画像をキュレーション的に取り上げる記事を継続的に制作し、メディアが新しい状態を保ち続けることでした。
やったこと
1. 犬種の基礎情報を、記事で使える「表現の基準」へ翻訳
犬種ごとの基礎情報そのものは、クライアントの編集部から明文化された形で提供されていました。その犬種が一般にどんなイメージを持たれているか(忠実である、やや怖がり、お茶目な一面がある など)、健康や病気に強いか弱いか、遊び好きやいたずらの傾向とそこから来る注意点、といった内容です。
私が担ったのは、この情報を記事制作に使える形へ落とし込む作業でした。その犬種の個性をより魅力的に、面白く感じてもらうにはどういうワーディングや単語を選べばよいか。読者の感情を引き出す表現にはどんな傾向があるか。逆に、使わない表現はどれか。こうした基準を「この犬種ではこういうキーワードや表現が好まれる傾向にあるので、記事に盛り込んでください」という形でマニュアルに反映しました。
ライターはマニュアルを見て、そこに近い表現を選んでいけば自然と正解に近づけます。書き手個人のセンスや犬種への詳しさに頼らずに済む状態を、先につくったことになります。
2. 自分が書ける状態を土台に、体制を拡大
最初は私が一人のライターとして参加し、月30記事程度を安定して出せる状態をまず確立しました。そのうえでライターを一人ずつアサインして体制を広げ、先方の依頼に合わせて制作できる数量を増やしていきました。
制作数量が一定を超えると、次の犬種のメディア立ち上げが依頼されます。これを繰り返して、最も多い時期には5つの犬種メディアを担当することになりました。各メディアは犬種特化型で、フレンチブルドッグならフレンチブルドッグ、柴犬なら柴犬という単位で立ち上がっています。
チームづくりでは、初期は知人5名で暫定的なチームを組み、その後Indeedで公募・選抜して本チームへ移行しました。運用時は約5名を管理しています。
3. 質を保つ運用の型を用意
- よくある間違いをチェックリスト化し、ミスをチーム全体で未然に防ぐ
- 記事フォーマットの変更に、チーム全体で追随できる手順を整備する
- スコア制でライターの活動を評価し、モチベーションを管理する
スコア制は、良い出来の記事を加点し、ミスやクレームにつながる問題を減点する形で、ライターの活動を評価する仕組みです。個人ごとに集計して総合評価を出し、その評価の変動を翌週以降の担当本数へ反映させました。評価が次の仕事量につながることで、品質を保つ動機がチームの側に生まれます。
4. 業務範囲を、双方の都合に合わせて引き直し
途中でクライアントから、スクリーンショットの撮影・加工業務を巻き取れないかという依頼がありました。もともと先方が対応していた業務です。InstagramならInstagram、YouTubeならYouTubeと媒体ごとに仕様が異なり、どう撮れば標準的な品質になるかが都度変わるため、定型業務にできるという見立てがあったのだと思います。
ただ、私の側は文字数と期日が決まったなかで制作単価を設定してライターに発注しています。新しい業務領域が加わると、単価に対して業務量だけが増えることになり、そのままでは受けにくい話でした。
そこでクライアントと交渉し、スクリーンショット対応を引き受ける代わりに、記事の導入文とまとめの部分を先方に巻き取ってもらうことにしました。この2箇所はコンバージョンや読了率に直結します。そしてクライアントにとっては、公開・格納の際にどのみち手直しすることが多く、編集部としての色を出したい箇所でもありました。「どちらにしろ直すところだから」という理由で、先方の工数もほとんど増えずに済んでいます。
結果として、双方の工数を増やさないまま業務範囲を組み替えることができ、お互いにとって効率のよい分担になりました。
実際の成果物
掲載している画像は、当時の資料をもとにAIで再現したイメージです。守秘義務等の事情により、実際の資料とは異なります。

ニュースアプリ経由で、犬に関心のある読者を集めるための記事です。収益性の高い記事(商品PR・イベント告知・インタビュー)はクライアント側が担当し、役割を分担していました。

犬種ごとの表現の基準も含め、記事の書き方をこの一覧に集約しました。

ライターごとにスコアを集計し、総合評価を出したものです。この評価が翌週以降の担当本数に反映されます。
| No. | チェック項目 |
|---|---|
| 企画案制作時 | |
| 1 | 避けるべきテーマに該当しないか。「犬本来の個性に根ざした可愛さ」ではなく「犬に◯◯してみた」など、オーナーが意図的に犬を利用して面白い状況を作り出そうとするものは避ける。 |
| 2 | 一般的に犬であれば取るような行動にフォーカスしたものは、差し替え要望が出やすいため避ける。犬種特有のギャップがある言動を選ぶ。 |
| 記事タイトルの付け方 | |
| 3 | タイトルには①犬のアクション(記事中でとる仕草・行動)と②オチの示唆(結末を予感させる文言)の2要素を含める。 |
| 4 | 「かわいい」「愛らしい」「癒やし」等の抽象表現は、より具体的な喜怒哀楽を表す文言・比喩表現に変更する。 |
| 表記の統一 | |
| 5 | 犬種名は略称(例:フレブル→FBL、柴犬→SIL)で統一し、1記事内での混在は不可。ただし複数の犬を区別する目的での使い分けは可。 |
| 6 | 「エサ」は「ごはん」「フード」「食事」に置き換える。「飼い主」ではなく「オーナーさん」と呼ぶ。数え方は「1頭、2頭」で「匹」は使わない。 |
| 避けるべき言い回し | |
| 7 | 「〜のようです。〜らしいです。」は推定表現のため不可。「皆さんは〜したことがあるでしょうか?」も文章が長くなるため避ける。 |
| 8 | 冗長な情景描写は簡潔に置き換える。 例:「ゴロンと横になって床に」→「ゴロンと床で」 |
起きやすいミスを事前に共有し、チーム全体で予防する仕組みです。避けるべきテーマの選び方からタイトルの型、犬種名の表記統一、避けるべき言い回しまで、細部にわたって基準を定めています(掲載は代表的な項目の抜粋)。
結果
メディアが最も成長した時期の規模を、記事供給の面から支えました。クライアント側の編集部は、取材やタイアップといった優先度の高い記事に人と時間を集中させられる状態を、約6年にわたって保ち続けています。
書き手が入れ替わっても、担当メディアが5つに増えても、記事の質は揃ったままでした。表現の基準がマニュアルという形で共有されていたためです。
いまのサービスとのつながり
この案件で私が担ったのは、犬種の情報そのものを調べることよりも、その個性をどう表現すればよいかという基準を言葉にすることでした。何を書けば魅力的に伝わり、どの表現は使わないのか。それをマニュアルという誰でも参照できる形に落としています。
基準が言葉になっていれば、書き手が入れ替わっても、メディアが5つに増えても、月250記事という量になっても、記事の質は揃います。逆にこれが個人の感覚のままだったなら、人が増えた時点で崩れていたはずです。
いま提供している訴求方針チェックリストは、まさにこの考え方を形にしたものです。当時はアウトプットとして整理されていませんでしたが、やっていたことは同じでした。会社の“らしさ”についても構造は変わりません。すでにその会社の中にあるものを、誰もが使える表現の基準に翻訳する。それがナラティブ構築サービスの中身です。